空手道場で行っている「黙想」の重要性や効果について

空手道場での黙想(もくそう)は、単なる形式ではなく、科学的にも心と体に良い効果があるとされています。

ここでは、その重要性や効果を、科学的な根拠も交えながら、わかりやすく説明していきます。

黙想とは?

稽古の前後に正座をして、目を閉じ、静かに呼吸を整える時間です。

ほんの少しの時間ですが、心のスイッチを切り替える「儀式」のような役割を果たしています。

黙想の科学的な効果

① 脳を「戦闘モード」に切り替える(稽古前)

人間の脳は、集中するために前頭前野(ぜんとうぜんや)が活性化します。

黙想によって呼吸を整えると、脳の雑音が減り、前頭前野がスムーズに働くようになります

→ つまり、黙想することで「よし、今からやるぞ!」と集中モードに入れる。

たとえるなら:

パソコンで言うと、いらないタブを全部閉じて、必要な作業だけに集中する状態です。

② 呼吸で自律神経が整う(稽古前も後も効果あり)

黙想の基本は「ゆっくりとした呼吸」。

この呼吸が、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを整えます。

  • 稽古前:交感神経が少し活性化
    → やる気が出る
  • 稽古後:副交感神経が優位に
    → リラックス、心が落ち着く

つまり、黙想は心のギアチェンジ。

始まる前は「戦闘モード」、終わった後は「リラックスモード」へ。

③ 感情をコントロールしやすくなる

科学的研究で、瞑想や黙想を日常的に行っている人は、怒りや不安を感じにくいというデータがあります。

これは、感情を司る「扁桃体(へんとうたい)」の活動が抑えられ、冷静な判断がしやすくなるため。

空手では、感情に流されずに行動することがとても大切。

その訓練が、実は「黙想」でも行われているんです。

子どもにも効果あり?

もちろんです!むしろ子どもにこそオススメ。

  • 黙想を習慣にしている子は、集中力が高く、キレにくい傾向がある
  • ADHD傾向の子にも、落ち着きやすくなる効果が報告されている

稽古だけでなく、学校生活にもいい影響を与える可能性があります。

まとめ

黙想は「心の稽古」

空手の技だけでなく、心を鍛える時間でもある黙想。

ほんの少しの静けさが、集中力、感情のコントロール、心身のリセットにつながっています。

黙想は、現代科学でも「心を整える最強のツール」として注目されています。

この記事を書いた人

1977年生まれ。岐阜県出身。3才から空手を始める。愛知大学空手道部OB(平成11年度卒)。大学卒業後、JICA協力隊に参加し、南米のボリビア共和国に派遣される。首都ラ・パスにある国家警察学校の武道教官として学生に空手を指導。警察署、機動隊、要人警護隊、日本大使館への空手と護身術の巡回指導も行う。帰国後は、JICAの短期派遣にて、ラオス、スリランカ、エルサルバドル、フィジーに派遣され空手道の指導に当たる。武道としての空手道、スポーツとしての空手道を研究し、道場で指導中。